ただ
さめざめと いずれはひとつところへ帰ってゆく身の
いかなる道を 走ってゆこうと のたうってゆこうと
いささかも 肩ひじなど張らなくてよいのだということを
粘土遊びの途中に
ふと 気づかされたようなのであった
創造することの 不得手な子どもで
つめたく かたく 油くさい粘土の塊を取り出すと
ひたすら粘土板に打ち付けて
反った板を うるさく鳴らしてばかりいた
(「虚仮の一念」より)
手を振り合い
次第にはなれて行くときも
幾度も絡まり合ったその感触を
「忘れない。」と互いに思うが
「嘘。」
右が交わるそのときも
左は宙をさまよっている
(「田螺の述懐」より)
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状態:C
プラカバーにスレヨゴレ、ノドにキレ少あり
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サイズ:191×1359mm
装幀:菊地信義
発行:2006年、思潮社